2026/08/19 14:12
龍の血を宿す香り ― 龍血樹
「龍血樹(りゅうけつじゅ)」。
その名からして、どこか神秘的なものを感じさせる香木です。
龍血樹から採れる赤い樹脂は、まるで竜の血のような深い赤色をしています。
乾燥している状態でも赤みを帯びていますが、水に濡らすと、その色はいっそう鮮やかに。
「龍の血」――その名の意味を、目の前で見せられるような赤です。
そして、何より惹かれるのが香り。
甘さの中に、ほんの少し酸味を思わせる香りが混じります。
白檀とも沈香とも違う。
華やか、爽やか、という言葉だけでも表せない。
非常に独特で、私はこれほどまでに神秘的だと感じる香りを、ほかに知りません。
ただ、この龍血樹。
お香の材料としては、非常に取り扱いが難しいものでした。
何度試しても、うまく燃焼しない。
香りは素晴らしいのに、お香として最後まで焚くことができない。
配合を変え、試作を重ねながら、その理由を探ってきました。
そしてようやく、ひとつの答えにたどり着きました。
炭粉と楠を加えること。
これによって、龍血樹の魅力を損なうことなく、きちんと燃焼させることができるようになりました。
火を灯してみると――
驚きました。
龍血樹ならではの甘さと、わずかな酸味を含んだ奥深い香りがゆっくりと立ち上がり、やがて空間いっぱいに広がっていきます。
信じられないほど、良い香りです。
単に「いい匂い」というだけではなく、どこか遠い場所へ意識を連れていかれるような、不思議な感覚。
赤い樹脂。
龍の血という名。
そして、火によって初めて解き放たれる神秘的な香り。
扱いが難しい素材だからこそ、こうしてひとつのお香として形になったときの喜びもひとしおです。
龍血樹という植物が長い年月をかけて宿してきたものを、ほんのひととき、香りを通して感じる。
そんなお香が完成しました。
